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『誰も知らない』
a0012356_1635570.jpgホラー映画を創造する起点として”極限状態を作り出す”という手法がある。宇宙に取り残される、北極の観測基地に閉じ込められる、大海原の船で襲われる・・・などなど。

これらは非日常である事が前提なのだが、なんの事は無い。極限状態は日常のすぐ脇に転がっているのである。88年に起きた「巣鴨子供置き去り事件」を元にした『誰も知らない』は母親が幼い子供達をマンションに置き去りにして好きな男の元へと行ってしまうという状況で子供達に告げる、

「大きな声を出してはいけない」
「外に出ては行けない」
「長男、あとはヨロシク」


という三つの掟によって極限状態を作り出す。

ここで描かれるのは悲劇に違いないのだが、子供達が都会でいかに生活していくのか、生き抜いて行くのかという点においては哀れみは無くむしろ精力的に描かれる。怪物に簡単に殺されるホラー映画が成り立たないのと同じだ。

だからこの映画について「かわいそう」「ヒドい母親だ」という感想しか出て来ないのであればそれは何も観ていないのと同じである(劇場にいたおばはん達の感想はこんなだった)。泣いてるバアイなんかじゃ無いのだ。ただ悲劇的だと思うのはこの期におよんでも母親は微弱な愛情を子供達に持ち続け、子供達はそれを信じるしか方法が無かったという事だ。
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by erenoa70 | 2004-09-30 16:28 | Movie