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わらしべアンブレラ
わらしべアンブレラ_a0012356_835055.jpg何が頭にくるか?と聞かれたらコンビニでビニール傘をパクられた時だ、と答えるだろう。ついさっきも朝方なのにパクられて、たいへん悔しい思いをしたワケだが、因果応報かなとも思う。



以前、小雨振る中をボロボロの100円ビニール傘を差して家路を急いでいた時に立ち寄ったコンビニで買い物を済ませ、自分のビ二ール傘を取ろうと傘立てを探したが無い。似たようなビニール傘はいくつかあるが、俺の差してた年期の入った相棒はどこにも無かった。おそらく傘を持って無いヤツが雨を嫌い、俺のボロボロの傘ならパクってもいいだろうと思って犯行に及んだに違いない。しかしボロボロだろうが100円だろうが、どじょっこだろうがフナっこだろうが、パクリはパクリ、立派な窃盗である。

憤りを隠せない俺は思った。この世は不公平だ、理不尽だ、世紀末だと。俺は労働して得た給与から100円を出して傘を買った。それを何の不手際も無いのに奪われたのだ。この世が世紀末というなら生き延びねばならない。「目には目を、刃には刃を」である。俺は傘立ての中から比較的自分のに使用頻度の近いビニール傘を選ぶとそれを差してコンビニを立ち去った。不思議と罪悪感は無かった。

まだ家に帰るまでに立ち寄る店が何件かある。本屋で雑誌を買う。今度は傘立てに俺がコンビニから差してきた傘がちゃんとある。しかし人間、一度犯ってしまうと罪の意識は薄れるものだ。俺はさっきの傘より少し新しめのビニール傘を掴むと本屋を立ち去った。俺は強奪という辱めを受けたのだ、これくらいの見返りは当然だと思った。

次は古着屋に寄って欲しかったカットソーを買った。傘立てには俺の傘と、もうひとつのビニール傘があった。瞬時に見比べるとさらに新しい、綺麗な方の傘を手に取った。俺の陵辱された傘も昔は綺麗だったのだ。いったい誰が俺を責められようか。

次はスーパーでビールと夕ご飯の材料を買った。もう分かると思うが、さらに新しい傘を探すと、そこにあった。それは新しいというよりほぼ新品だった。おそらく購入されてまだ時間もたっていないように見受けられ、さすがに手が止まった。後ろの親子連れが雨に濡れまいと買ったのかも知れない。あの小さな子供は病弱かも知れない。家は貧乏かも知れない、D・Vかも知れない。しかし俺の目はすでに前科者のソレであった。新品同様の傘をさっと抜くとスーパーを後にする。振り向かず、カポーティの『冷血』の一節を諳んじてみた。

雨はまだ止みそうにない。傘を持たない愚民共はズブ濡れになりながら駆け足で行く。しかし俺には新品の傘があるので濡れやしない。「何かを失い、何かを得た、それだけの話だ」そう言い聞かせる頬を、雨とは別の水滴がゆっくりと伝うのだった・・・


後半は作りだが、まるで安いビニール傘はみんなのモノ!と勘違いして新しい傘を抜いてしまったのは本当。罰が当たった。雨に打たれ反省するべきなのだ。でもいつか始めのボロボロの傘が回り回って俺の元に返ってくる事があれば、それはそれでファンタジーなお話だと思う(反省の色無し)。
by erenoa70 | 2004-11-19 09:21 | Stupid