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「TOKYO YEAR ZERO」
a0012356_1301549.gif「TOKYO YEAR ZERO」を読了。

イギリスのミステリ作家、ディビット・ピース(東京在住12年)が終戦直後に起きた連続猟奇殺人「小平事件」を題材に、日本の暗部を描くというノワール物。これが今年読んだ小説の中で一番面白かった!

イギリス人って事で懸念された「不思議の国ニッポン」的な視線が全く無いのはもちろん、終戦後の東京の匂いや空気感をイビツな一人称で見事に表現しつつ、一級の犯罪小説に仕上げてるのが凄い。日本人作家だと「敗戦」を扱う以上、エンターティメントに徹するのが難しい部分もあるだけに、この辺りは歯痒い思いすらする。



しかしこれが一筋縄ではいかない。「上田秋成と泉鏡花の流儀で、ジェイムス・エルロイやジム・トンプスンのようなノワールが書きたかった(解説より)」と無茶な事を作者が語っているように重層構造の複雑な文体だから読むのがちと難しい。例えばこんな感じ。
彼らは嘘に嘘を重ね、嘘に嘘を連ねー
管理人とボイラー係はスコップを手にする・・・・
誰もが彼らの嘘に重ねた嘘を信じるまでー
スコップを手にして土を積み上げ始める・・・
誰もが自分で語る、これらの嘘をー
穴の中へ土を戻し始める・・・
誰もがこの歴史を信じるようになるまで
穴の中へ、その男の上にー
主人公である三波刑事は元憲兵で、カルモチンという睡眠薬の中毒。常に身体中をガリガリと掻き、汗を拭い這いずり回り、警察上層部やGHQ、ヤクザに怯えながら右往左往する。つまり敗戦国・日本を象徴する存在。上に挙げた一人称は全て三波刑事の言葉であり、そこに漂う焦燥感はそのまま日本のそれでもある。

しかしその読みづらい、幻覚のような言葉がクライマックスに向かうにつれて徐々に疾走感を持ち、読んでるこっちまで何かの黒い陰に追われ、怯えながら逃げ惑う感覚に陥るのが演出として素晴らしい。

そして全てが明らかになるラストにたどり着いた時、真っ白な焼け野原に放り出されたかのような絶望を味じわう事になるのだ。

実はこの小説「東京三部作」となっており、次回は「TOKYO OCCUPIED CITY」と題して「帝銀事件」、最終作「TOKYO REGAINED(仮)」では「下山事件」を扱う事になっているそうだ。個人的に最後の「下山事件」は昭和犯罪史にとってエポックメイキングな事件だと思っているので楽しみ過ぎる。

「TOKYO YEAR ZERO」公式サイト(すげえカッコいい)
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by erenoa70 | 2007-12-12 01:44 | BooK